この動画は、総合商社業界における人事・業績・戦略の動向を広く取り上げた内容である。
まず、ある総合商社が社内向けに出した文書の内容が事実であることが、広報担当者の確認により明らかになった。
この文書では、他の大手総合商社、特に三菱商事や三井物産が近年高い業績を上げており、それに対抗するため、給与制度を改定し、彼らに見劣りしない水準を目指すことが記されている。
この背景には、同業他社との間で人材獲得競争が激化している現状がある。
また、この商社のCEOは、これまで純利益で2度首位になった実績を踏まえ、次は3回目の首位を狙うとともに、社員のモチベーション向上を通じてさらなる業績拡大を狙っているとされる。
さらに、総合商社業界全体としても、近年非常に好調な業績を見せている。
五大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠、丸紅、住友商事)の平均年収は既に高水準にあるが、業績に伴いさらに上昇しており、三菱商事の平均年収は2000万円を超えている。
2016年3月期と比較して5社の合計純利益は約26倍にまで拡大しており、その背景には複数の要因がある。
第一に、資源分野では脱炭素の進展やウクライナ戦争の影響により、化石燃料の供給が制限され、資源価格が高騰している。
その結果、資源関連事業の利益水準が上昇した。
第二に、非資源分野でも供給不足(サプライショート)が発生し、コロナ禍による労働力・物流の停滞や半導体・自動車の不足などにより、トレーディング機能を有する商社が重要な役割を果たし、高いマージンを得たとされる。
第三に、2022年以降の円安傾向も追い風となり、海外比率の高い商社の業績をさらに押し上げた。
各商社の事業構成は多様化しており、特に旧財閥系の三井物産や三菱商事は資源分野の比率が高い傾向にあるが、2016年に資源関連で減損を計上して以降、非資源分野への投資を強化してきた。
伊藤忠のようにアパレルや小売(ファミリーマート)との連携を進める例もあり、商社間での横断的なシナジー創出が図られている。
また、近年は資産売却の動きも活発化しており、2023年度の売却額は過去2番目の規模に達した。
事業規模の拡大に伴い、事業の選別と資産の入れ替えが行われており、将来性や既存事業とのシナジーを基準に投資判断がなされている。
これは、商社が単なるトレーディング企業にとどまらず、ポートフォリオ全体を戦略的に運用するアセットマネジメント的な性格を強めていることを示している。
以上から、現在の総合商社は、伝統的な資源ビジネスだけでなく、非資源事業や資産運用の巧拙が業績に直結するようになっており、外的環境の変化に応じた柔軟な戦略転換が求められていることがうかがえる。