この動画は、高配当株投資で得た配当金の再投資の是非について、一般的な金融理論とは異なる視点から解説しています。
配当金再投資の効果をデータで示しつつ、個人の「今」と「未来」のバランス、そして投資の目的が重要であることを強調しています。
目次
配当金再投資の効果
高配当株投資において、配当金を再投資することの重要性は金融の世界で常識とされています。これは、配当金を投資元本に加えて運用することで、複利効果によって資産を雪だるま式に増やすことができるためです。
例えば、米国の高配当株ファンドであるHDVに2012年に1万ドル投資し、受け取った配当金を全て再投資し続けた場合、2022年には約2万8,300ドル(年利10.4%)に増加しました。
一方、配当金を全て使って再投資しなかった場合、元本は約1万9,604ドル(年利6.618%)に成長し、さらに10年間で約5,306ドルの配当金を受け取ることができます。
この結果から、配当金を再投資した方が、総資産を効率的に増やすことができるのは明らかです。
投資元本が大きくなるほど、運用期間が長くなるほど、再投資による複利効果はより大きくなります。
配当金を使っても良いと考える理由
一般的な金融理論では配当金は再投資すべきとされますが、講演者は「時には配当金を使っても良い」という見解を示しています。
その理由は、「今」と「未来」のバランスを重視することにあります。
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投資目的との整合性: もし投資の目的が老後資金の形成であるならば、配当利回りを気にせず、S&P500などの伝統的な時価総額加重インデックスファンドに投資し、その配当金も全て再投資することが最も合理的です。しかし、全ての人が老後のためだけに現在の生活を犠牲にしたいと考えているわけではありません。
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「今」を楽しむ特権: 増えない給料、増える税金、増える生活費といった状況の中で、年間20万円の配当金が得られることは、同僚よりも良い家に住んだり、お小遣いを増やしたり、家族との外食や旅行を増やしたりできる「特権」と捉えることができます。これは、若い時にしかできない経験やお金の使い方が存在するため、今の生活を充実させる選択肢として重要です。
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元本の成長と増配の可能性: 配当金を使っても、優良な高配当株は長期的に元本が毀損せず、むしろ成長し、配当金も増配していく可能性があります。例えば、HDVのチャート(配当金再投資なし)を見ても、10年間で元本が約2倍に成長し、年間配当金も初期投資額に対する利回りで約3.75%から6.32%へと高配当化しています。
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「完全なフリーキャッシュ」としての配当金: 不動産投資の家賃収入やビジネスの売上と異なり、配当金は企業が製品原価、人件費、税金、投資資金などを全て支払った後に残る、株主にとっての「完全なフリーキャッシュ」です。配当金を使っても企業のビジネスは維持・成長していくため、投資家は純粋な利益としてそれを享受できます。
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選択肢と心の余裕: 配当金を使うことで、生活に余裕がある時は再投資に回し、予期せぬ出費があった際には配当金で補填するなど、柔軟な選択肢を持つことができます。この選択肢の存在自体が、キャッシュフローを重視した投資のメリットであり、贅沢な悩みであると捉えることができます。
今後の戦略と補足
インデックス投資と高配当株投資のどちらが良いかという議論は、個人の投資目的やスタイルによって異なるため、無意味であると講演者は考えています。
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資産拡大を最優先するなら: 老後資金の形成など、最高効率で合理的に資産を最大化したい場合は、配当利回りを気にせず、市場全体に投資できるインデックスファンドを購入し、配当金はひたすら再投資すべきです。
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「今」と「未来」のバランスを取りたいなら: インデックス投資で未来の資産形成を図りつつ、高配当株投資でキャッシュフローを強化し、今使えるお金も増やしていく「両頭戦略」も大いに有効です。つみたてNISAやiDeCoでインデックスファンドに投資し、さらに余力があれば高配当株でキャッシュフローを強化するという組み合わせは、多くの人にとって使いやすい戦略です。
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資産の取り崩しに関する補足: S&P500などに投資して必要になったら都度取り崩せば良いという意見もありますが、実際にそれを実践している人はほとんど見られず、メンタル的にも技術的にも難しいと指摘されています。特に暴落時に資産を売却できるか、適切なタイミングを測れるかといった課題があります。
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高配当戦略のリターンに関する補足: 近年はインデックス投資(特にS&P500)が高配当株ファンドを上回るパフォーマンスを示していますが、過去には高配当株ファンドが市場平均を上回る期間も存在しました(例:2007-2017年のVYM、2016-2019年のSPYD)。将来の市場動向を踏まえ、各自が総合的に判断する必要があるとしています。
最終的に、投資をする目的、つまり「どのような人生を送りたいか」という自身の目的地を明確にすることが最も重要です。
目的地がなければ、どんな投資方法を選んでも目標には到達できません。