英語をC2レベル(母語話者に近い熟達レベル)まで習得した人物が、自身の学習法を紹介している。
特別な裏技や複雑なメソッドはなく、日々実践できるシンプルな方法に基づいている。
この方法は柔軟で、個人の生活に合わせて調整可能である。
具体的な学習の仕組みや毎日のチェックリスト、学習効率を妨げる一般的な誤りなどをまとめた無料ガイドも提供されている。
まず、従来の学校教育では英語を習得できなかった理由について述べている。
小学生の頃から英語の授業を受けていたが、当時は外国語への関心がなく、英語を必要とする未来を想像できなかった。
しかし、進学を考え始めた14〜15歳の頃に、英語の必要性を実感し始める。
そして、従来の学習スタイル(文法中心、試験対策)に限界を感じ、「英語を嫌いな教科から、楽しい活動に変えたい」という思いが芽生える。
高校では授業や課題はこなしていたが、リスニング能力が極端に低く、会話になると全く対応できなかった。
転機となったのは大学に進学してからで、英語を本当に習得するには、日常生活の一部として英語を「暮らしに溶け込ませる」必要があると気づいた。
この考え方に基づいて実践されたシステムは、大きく3つのステップに分けられる。
第一ステップは、「生活を英語で満たす」こと。テレビ番組や本を通じて英語に日常的に触れることを基本とし、特に自分にとって理解可能な内容(=「理解可能なインプット」)を選ぶことが重要であると強調されている。
理解できないレベルの素材では挫折してしまうため、「95%以上理解できる内容」を選ぶのが理想とされる。
たとえば、高校生の時は『デスパレートな妻たち』のような理解しやすくて面白いドラマや、若者向けのフィクション(ヤングアダルト小説)を利用し、楽しみながら語彙や表現を習得した。
大学では毎日の通学時間を使い、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』シリーズを熱中して読んだことが、語彙や表現力の向上に大きく寄与した。
このシリーズはファンタジー・ミステリー・ホラーの要素があり、読者の興味を強く引きつける内容となっている。
第二ステップは、「英語をデフォルトの言語にする」こと。
つまり、自分をすでに英語圏の人間であるかのように振る舞うというマインドセットである。
スマートフォンやPC、SNSの言語設定をすべて英語に変更し、日記、買い物リスト、予定表なども英語で書く習慣をつけた。
エクササイズの計画やヨガ動画など、日々の行動すべてにおいて英語を使うよう意識し、「自分で制御可能な領域においてはすべて英語にする」ことで、自然と語学力が身についた。
住んでいたのは英語圏ではなかったため、日常的に周囲の人々とは母語で会話をしていたが、自分一人の時間には常に英語を使うよう徹底していた。
第三ステップは、「能動的な学習と受動的な学習を区別すること」。
中級レベルに差し掛かると、ただ英語の映像や音声に触れるだけでは上達が頭打ちになる。
ここで求められるのは、「集中して聞く」「シャドーイング(聞いた英語を即座に口に出す)」「発音の真似」「字幕あり・なしの繰り返し視聴」といった能動的な関与である。
映画やドラマをただ観るのではなく、勉強として取り組むことが大切である。
読書においても、Audibleなどの音声と併用しながら、本を目で追い、時には音読することで、発音や構文が自然と身につく。
このように、受動的に「浴びる」だけでなく、積極的に「吸収する」姿勢が成果に直結した。
さらに、学習過程の「整理と記録」も大きな助けになったと述べている。
学んだ単語やフレーズ、新たな知識を記録・管理するためのツールとしてNotionを使用しており、学習計画や進捗を可視化することでモチベーションの維持にもつながっている。
全体を通して、この学習法の特徴は「自分の生活に英語を浸透させ、理解可能な範囲で楽しみながら、能動的に吸収していくこと」である。
英語圏に住まずとも、環境を意図的に英語中心に変えていく工夫が、最終的なC2レベル達成に大きく貢献したと述べている。