この講話では、不動産投資において「利回り」を正しく理解し、物件の適正な収益性を見極める重要性について解説しています。
目次
利回りとは
利回りとは、投資した金額に対して1年間でどのくらいの収益が得られるかを示す指標です。
株式や銀行預金と同様に不動産投資でも用いられますが、不動産の場合は様々なコストがかかるため、計算が複雑になります。
表面利回りと実質利回り
不動産投資において特に重要なのが、以下の2つの利回りです。
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表面利回り:
- 計算式:年間想定家賃 ÷ 物件価格
- 特徴:投資家向けのサイトなどで一般的に表示されている利回りですが、これは大まかな概算であり、実態と大きく異なる場合があります。
- 問題点:
- 毎月の費用や諸費用が考慮されていない。
- 想定家賃が高めに設定されている可能性がある。 (例:周辺相場より高い、一時的に高い家賃で入居させているなど)
- 空室リスクが考慮されていない。
- 注意点:表面利回りだけで判断すると、実際の収益が期待よりもはるかに低くなる可能性があるため、鵜呑みにしてはいけません。
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実質利回り:
- 計算式:(年間家賃 - 経費) ÷ (物件価格 + 購入時の諸費用)
- 特徴:物件にかかる全ての費用(購入時の諸費用や運用中の経費)を考慮した、本当の収益率を示すため、不動産投資では最も重要な指標となります。
- 重要性:この実質利回りこそが、投資の成否を分けるカギとなります。
考慮すべき経費と諸費用
実質利回りを計算する上で考慮すべき主な経費と諸費用は以下の通りです。
- 購入時の諸費用:
- 印紙税、登録免許税、司法書士報酬、仲介手数料、火災保険料など。
- 運用中の経費:
- リフォーム代: 購入後の改修費用。
- 広告料・仲介手数料: 新規入居者募集にかかる費用。
- 固定資産税: 毎年発生する税金。
- 修繕費: 設備の故障や老朽化に伴う修繕費用。
- 火災保険料: 毎年または数年ごとに発生する保険料。
- 管理費: 管理会社に管理を委託する場合に発生する費用(家賃の3〜5%程度)。
- 退去時費用: 退去後の原状回復費用など。
実質利回りを見極める方法
正しい実質利回りを見極めるためには、以下の点を実践し、目を養うことが重要です。
- 自分で計算する:
- 健美家や楽待などの投資家向けサイトや、アットホームなどの一般の不動産サイトを活用し、様々な物件の情報を確認します。
- 記載されている情報(物件価格、想定家賃など)と、自身で想定する経費や諸費用を基に、何度も電卓を叩いて実質利回りをシミュレーションする練習をします。
- 相場観を養う:
- 周辺地域の家賃相場をSUUMOやHOME'Sなどの賃貸情報サイトで調べ、想定家賃が適正かを確認します。
- マンションの場合は、管理費や修繕積立金も確認します。
- 過去の空室率や物件の特性(例:大学や工場がある地域の物件は、それらの状況に影響される可能性)を考慮し、満室経営が可能か、すぐに退去者が出ないかなどを検討します。
- 物件の特性とリスクを考慮する:
- 大規模修繕の有無: 屋根や外壁など、将来的に大きな修繕費用がかかる可能性がないかを確認します。
- 告知事項の有無: 心理的瑕疵(例:過去に死亡事故があった物件)など、物件の価格を下げている原因がないかを確認します。
- 再建築不可: 建物の建て替えができない土地ではないかを確認します。
- 連棟(テラスハウス): 戸建てに見えても、隣家と壁でつながっている連棟形式の物件ではないかを確認します(安価になる傾向がある)。
- リフォーム費用の計算: 物件の状態から、どのくらいのリフォーム費用がかかりそうかを試算します。
これらの実践を通じて、様々な物件の数字に慣れ、自身で実質利回りを正確にシミュレーションできるようになることが、不動産投資の成功には不可欠であると結論付けられています。