2025年6月3日に開かれたバークシャー・ハザウェイの株主総会で、ウォーレン・バフェット氏がCEOを退任する意向を明らかにした。
この総会は、氏の出身地であるアメリカ・オマハで開催され、毎年恒例の“祭り”のようなイベントとして知られており、数万人が集まり、長時間にわたりバフェット氏に直接質問できる場となっている。
今年も94歳のバフェット氏が4時間半にわたり質問に答え続け、驚異的な体力を見せた。
セッション終盤に突如として、バフェット氏が翌日の取締役会で引退を提案する意向を述べ、会場は静まり返った後、後継者とされるグレッグ・アベル氏の登場とともに大きな拍手に包まれた。
バークシャー・ハザウェイは一般的に投資会社と呼ばれるが、その実態は複合企業体であり、アップルやアメリカン・エキスプレス、コカ・コーラといった株式投資のみならず、鉄道や保険、菓子メーカーなど多様な事業を自社運営する企業群を傘下に持つ。
そうした複雑性が、日本の総合商社に対する同社の投資と親和性が高い理由でもあるとされている。
バフェット氏が“投資の神様”と称されるのは、1965年に同社の経営権を取得して以降、株価を60年で6万倍以上にまで成長させた圧倒的な投資実績によるものだ。
個人投資家にとっては「ヒーロー」として広く認知されている。
今回の総会でバフェット氏は、通商政策において保護主義的な関税(例:トランプ政権の関税)を用いることに対し批判的な立場を表明した。
これは、現代のアメリカ経済がグローバルなサプライチェーンに深く組み込まれており、モノ・ヒト・カネの流れが国際化している現状を踏まえた警鐘である。
実際、バークシャーの総会で販売される商品にも「メイド・インUSA」と明記されつつ「グローバルパーツ使用」と記されるなど、部品の国際調達が行われている。
また、経営幹部の中にもカナダやインド出身者が含まれ、株主の約3割は外国人という事実が、アメリカ経済のグローバル化を裏付けている。バフェット氏のメッセージは、こうした時代において国際的なつながりを断ち切る通商政策がもたらす弊害への強い懸念に根差している。
一方で日本に対しては、特に総合商社に対する長期投資の意志を明言した。
50年保有してほしいという発言もあり、その投資手法は革新的である。
円建てでの調達と投資により為替リスクを排除し、日本の低金利環境を活かす形で、低利での資金調達が可能になっている。
さらにバークシャー・ハザウェイは高い信用格付け(AA格付けのすぐ下)を持つことから、調達コストが非常に低い。
一方で、日本の総合商社の配当利回りは高く、たとえば三菱商事では4%近い。このため、借入金利と配当利回りの差によって高い収益を狙う戦略が成立する。
後継者として指名されたグレッグ・アベル氏は実業家としてのキャリアを歩んできた人物で、1999年にバークシャー・ハザウェイに加わり、現在62歳。
保険部門を除いた実業部門(鉄道・エネルギー・キャンディなど)を長く監督してきたが、純粋な投資家としての知名度や評価はまだ不透明である。
この点がバフェット氏との大きな違いでもあり、同氏が会長職として残ることでアベル氏を支える役割を果たすと見られている。
投資判断に関しても全面的に手を引くのではなく、あくまで補佐的な立場で関与を続ける可能性が高い。
来年の株主総会にも登場することが期待されている。
この特集の今後のパートでは、海外投資家から見た日本企業の魅力や課題について、さらに掘り下げていく構成となっている。