この対話では、個人事業主が法人化する際のメリット・デメリット、および法人から個人に戻る際の注意点について、実体験を交えて具体的に説明されている。
特に、法人化の判断において重要なのは「コストを含めた全体像を把握し、目的に応じた最適な形態を選択すること」であると強調されている。
話し手は、過去に2回法人化し、その後個人に戻った経験を持っており、それぞれが必ずしも経済的失敗ではなく、「人間関係の問題」や「経営上の方針の違い」によるものであったと述べている。
たとえば、父親との共同経営で法人化したが、喧嘩別れにより個人事業に戻り、また別の税理士と法人を立ち上げた際も、相手が独立を希望して別れたというケースが紹介されている。
これらは、法人の維持には関係性の安定性や長期的な協業への覚悟が必要であることを示唆している。
法人化のメリットとしては、「社会的信用の向上」「節税の可能性」「一定の取引条件のクリア(法人格でないと取引できない案件や融資など)」が挙げられる。
また、課税面では所得が約900万円を超えると法人税の方が有利になるケースがあること、そして売上が1,000万円を超えると消費税課税事業者となるが、法人化することで再び2年間免税を受けられるという節税効果にも触れている。
これはインボイス制度開始以降、特に注目される観点となっている。
一方で法人化のデメリットも明確に説明されており、「設立費用(約30万円)」「登記や税務等の手続きの煩雑さ」「社会保険加入義務」「法人税の申告が複雑で税理士がほぼ必須」「赤字でも法人住民税の均等割り(年間7万円程度)が発生」など、個人事業に比べてコストと運用の手間が大きくなる点が指摘されている。
また、会社のお金を自由に使えない(私的流用は税務上問題となる)ことや、役員報酬の設定や社会保険料負担に関する調整が必要であることも説明されている。
そのため、法人化は節税や肩書きだけで判断すべきでなく、自分の事業規模、取引先との関係、将来像を見据えた上での判断が不可欠であり、さらに「万が一、法人が続けられなくなった場合に個人に戻すことは可能だが、その過程には一定の手続きや注意点がある」という点も重要視されている。
全体を通して、法人化はあくまで手段であり、本質的には「自分がどのような働き方・事業の展開を望むのか」によって選択すべきであるという考えが貫かれている。
法人と個人事業主のどちらが優れているかではなく、自分にとって最適な形を見極めるために、事前に制度やリスク、コストをしっかり理解しておくことの重要性が語られている。