今回の記事では、2016年に発行された「銀行員しか知らない、無理なく1000万円貯める技術」という書籍を紹介します。
このレビューには、筆者個人の主観が多く含まれているので、本の内容とは真逆のことを主張することもありますが、ひとつの意見として読み流していただければ幸いです。
まず最初にこの本の全体像を要約しておくと、これから経済的に厳しくなっていく日本社会で、個人がどのようにしてお金と付き合っていくかをまとている、という内容です。
出だしから暗い雰囲気で始まりますが、現実を直視するためにも向き合わなければいけないことが淡々と書かれています。
そして、そんな厳しい時代にあなたは(経済的に)どう生きていくのか、を問い直されます。
現代では、お金と無関係に生きることはできません。
知識を身につけるだけで、将来の不安がほんの少し和らぐような、そんな後味の本に仕上がっています。
2025年現在からすれば、もはや当たり前となっているものもありますが、10年ほど前にはこのような情報が書籍になっていたのか〜と、不思議な気分になりました。
内容もわかりやすく、実生活にすぐに応用できる知識が満載ですので、お金の知識が乏しいなと感じている方の参考になるでしょう。
今回の要約は、中身の順番通りではなくバラバラに気づいたことや思ったことを書いていくので、目次から読みたい場所に飛んでください。
目次
無理なく1000万円を貯める、とあるが...
本のタイトルには「無理なく1000万円を貯める」とついていますが、中身を読み進めていくと不動産投資や積立投資などの、貯めるというよりは稼ぐことにフォーカスした内容も含まれています。
これは、著者が不動産鑑定士という肩書を持っていることからもわかる通り、若干のバイアスがかかっているものだと思います。
1000万円を貯めるためには、少なからずリスクを取らなければならない、ということでしょう。
現在では、NISAやiDeCOといった税制優遇制度のある投資手法がスタートしており、海外のETFやREITといった豊富な投資商品にもパソコンからクリックひとつで投資できるようになっています。
このような制度があるということを知っているか、それだけでお金を増やすマシーンを使い始めることができるというわけです。
増えるのではなく、減ることもあるわけですが、このようなリスクを受け入れられない人は日本人には多いでしょう。
働くことを美とし、投資から得たお金に対して良いイメージを持たない人もいます。
ですが、下り坂のエスカレーターに乗っている日本人にとって、上り坂のエスカレーターに乗っている海外に投資するというのは、勝率の高い投資と言えるでしょう。
今はそれを後押しする制度も整備されています。必要なことは行動力だけなのです。
税金は上がるしかない
2025年を生きている我々は、今後の急激な人口減少を経験することになります。
子供の生まれる数が減り、高齢者の数が増えていく。
そして医療技術の発達により、高齢者はより長生きするようになります。
つまり、社会保障費や年金はこれからますます増え続けることになります。
一方で、働く世代は減り続けており、一人一人の負担はどんどん増えていきます。
税金が増えて、手取りが減り、自由に使えるお金が減る。
経済的に余裕がなくなり、子供を産み育てることのハードルは年々上がり続ける。
さらに子供の生まれる数が減るという悪循環にハマってしまっているのです。
この課題に対して、日本は解決策を見出せていません。税金の負担が増えるというのは、構造的に変わりようがないわけです。
このような社会でどのようにして自分の資産を効率的に増やし、守っていくのかは渦中に生きる我々にとって大きな関心ごとになるのは必然です。
マインドも重要
不動産投資や定期預金といったハード面を活用する一方で、目標を持つ、時間を大切にするといった、内的なマインドも重要だということを主張されています。
人の行動のモチベーションとなるものは、普段からどんな情報を取り入れ、何を考えているかです。
考え方次第で行動が変わります。行動の結果を決めるのは、突き詰めて考えれば「何を考えているか」なのです。
人間は何を意識するかで、見えている景色が変わります。
例えば、自分が運転している車と同じ車種やメーカーは、自然と目に留まりますよね。
赤いものを意識すると、見過ごしていた赤いものがこんなにあったのか、と発見があります。
お金を増やすためには、意識してお金の情報を取り入れなければなりません。目を逸らしてはいけないのです。
個人よりもチームワーク
貯める技術とは直接関係ありませんが、お金を稼ぐという点においては、孤高の一匹狼よりもチームワークの方が効率的です。自分の不得意なことは、得意な人にやってもらい、規模の力でより大きな稼ぎを得る。会社という仕組みによって、お金を増やすマシーンを作り出すという意味でしょう。向き不向きもありますが、やはりお金を稼ぐことを目的にするのであれば、個人よりもチームの方が良いです。個人ではトヨタのように何十兆円もの売り上げを生み出すことはできません。個人を捨てて会社組織の一員になることは、簡単にお金を増やすマシーンを利用できるということを意味しています。ただし、複数人で仕事をする以上は、得られる利益は分配されますし、労働分配率や内部留保といった考え方から、その全てを手にすることはできなくなります。会社の一員として働くことは、このような縛りを受け入れるということでもあります。会社員は私からは大人に見えます。
徹底的なリサーチでリスクを防ぐ
おいしい話に騙されないためには、とにかく徹底的なリサーチが必要です。
その情報は正しいのか。自分に適した情報なのか。このような心構えは、自分のお金を守っていく上で大切になります。
話は変わりますが、私は電話で営業してくる会社(や個人)が苦手です。
メールよりも電話の方が契約件数が多くなるのは、言葉巧みな営業トークによって、相手の考える時間的余裕を奪っているからです。
そうならないためにも、電話番号を非公開にしておき、問い合わせ方法をメールのみにしている会社はたくさんあります。
間違っても、電話や初対面での会話だけですぐに契約するということは絶対にやってはいけません。
会社のホームページなどを十分に調べ上げた上で、自分のスタイルに合致するか落とし込まなければなりません。
即断即決で下した結論でうまくいくことなんて、まずあり得ません。
よくある成功者のストーリーで、すぐに行動したことによってうまくいったという類のものがありますが、その背後にある隠れた努力を隠しています。
あるいは、見せるために美化されたものばかりでしょう。
見せかけに騙されずに本質を見抜く力を養わなければなりません。
銀行員はクレジットカードを持たない?
銀行員は顧客にはクレジットカードを作らせますが、自分では持たないと言います。
もちろん全員ではないでしょうし、そんな人は少数だと思いますが。
クレジットカードは、自分が使った金額を把握できなくなるというデメリットがあります。
これはお金を貯めるという点においては致命的なデメリットと言えるでしょう。
Amazonや楽天市場にクレジットカードを登録してしまえば、あとはクリック一つで簡単に買い物ができてしまいます。
財布の紐が緩くなってしまうのです。
お金を使うハードルを一気に、2段も3段も超えてしまっているのです。
普通に買い物する場合には、家の外に出るために着替えて準備をし、移動しなければなりません。
重い荷物を持って自宅まで持って帰る手間を考えると、買い物の手間って結構大きいですよね。
だからこそネットショッピングを利用するわけですが、ここが大きな落とし穴です。
ネットで買い物するときに、人は自分の財布の中身をいちいち確認するでしょうか。
自分の銀行口座の金額はこのくらいかなーと適当に目星をつけ、今月のクレジットカードの引き落としはいくらかなと想像します。
そして、大抵の場合は、その予想は大きく外れることになります。
家計簿でもつけていない限り、使った金額なんていちいち覚えていられるはずがありません。
だから、月末になってクレジットカードの利用金額が引き落とされると、「こんなにお金使ったかな...」と頭を抱えることになるのです。
クレジットカードの利用明細はウェブで閲覧できるようになっていますが、紙の明細が推奨されています。
紙であれば強制的に手元に届けられますし、何にいくらお金を使ったのかを確認する習慣をつけることができます。
まずは支出の把握を始めることが、貯めるためのスタート地点なのです。
日本円だけを持つのはリスク。じゃあFX?
円安によって、日本円の価値はドルやユーロと比較して価値が落ちています。
これにより、原油や食料といった海外からの輸入品のコストが高くなり、日本国内の商品全体の価格が押し上げられインフレになっています。
日本円しか持っていないということは、このような円安の影響をダイレクトに受けてしまい、ダメージを軽減する手段を持っていない、ということを意味します。
このような状況で海外株式や債券を保有していれば一方的な目減りを防いでバランスを保つことができます。しかし、資産を分散させるという考え方を持つ人はどのくらいいるでしょうか。
今の時代は、株式や債券、投資信託、金、不動産などあらゆる分野の投資商品を証券会社経由で購入することができます。しかも、それらはネットから購入することができるようになっています。
考え方を変えるだけで、自分のとる行動は良くも悪くも変わります。何もせずに社会変化の影響をノーガードで受けるのか、リスクヘッジをして少しでもダメージを減らすのか。あなたはどちらを選びますか?
円安によって外貨預金も注目されるようになりました。円だけでなく外貨にもお金を預けておく。これによって、為替変動のリスクを抑えることができます。
外貨預金の注意すべきポイントは、手数料が高いということです。口座開設にも多少手間がかかります。
より手数料の安いFXという手段もあります。資産を分散する目的で、FXをする場合は「儲けよう」という欲を持ってはいけません。ただ、ドルを持っておく。これだけで十分です。頻繁に売り買いをすると、儲けるのは運営会社だけです。
FXで破産した、というテレビ番組を見たことはありますか?あれは、レバレッジをかけて手元にある資金以上のお金を売買するからこそ起こるものです。素人が手を出すべきものではありません。
おいしい話日本代表「ワンルームマンション投資」
おいしい話には裏がある。ワンルームマンション投資は、ローンでマンションを購入し、その部屋を貸し出して家賃収入を得る。そうすれば、家賃をローン返済に充てることができて、返済し終わったら、家賃収入が入り続ける。
ワンルームマンションを購入していいのは、現金一括で購入できるような大金持ちだけです。ローンを組まないと物件を購入できないような我々庶民が手を出していい投資ではありません。
ワンルームマンションで儲けている人を探す方が難しいと言われています。その一番の理由は、相場よりも高い価格で買わされてしまうからです。土地も手に入らず、年々価値は下がり続ける。でもローンは返済し続けなければならない。
購入した時点の金額が高すぎると、それだけで負け戦に引きづり込まれてしまうのです。
しかし、一方で都内のマンションが値上がりし続けているというニュースもよく見ますよね。外国人投資家が日本のマンションを購入し、価格を引き上げているのです。販売者側も「売れるならもっと価格を上げよう」となるのは自然です。
ですが当然ながら、いつかは価格上昇はストップします。マンションの価格が一兆円になるなんてことはあり得ないのです。つまり、どこかの時点でまた価格が下がり始める時がきます。ここを見極めることができる人は、あっという間に大富豪です。
「時は金なり」にひそむ罠
Time is Money。
金は命より重い
これらの言葉に時代錯誤感を感じるようになってきたのは私だけでしょうか。
おそらくメディアの影響を受けているのでしょう。
私たちは、お金を手に入れるためにいろんなものを犠牲にしています。
ある人はより高級な仕事を求めて都会へ移動し一人ぼっちで金を稼ぎに戦場に向かう。
時間を作るためにフードデリバリーを使い、タクシーを使い、ベビーシッターを使う、お金にならないことはしない。
お金を最大化するために最も効率の良い方法を探す。
資本主義社会では、必ずこの考え方に辿り着きます。
人の行動がお金で交換可能なサービスになり、得られるお金がまるで自分の価値であるかのような錯覚に陥ります。
稼いだお金は人からの感謝だという考え方もあります。では、あまりお金が稼げない仕事は感謝されないということでしょうか。
この風潮に疑問を呈しているのが、脱成長と呼ばれる考え方です。
ちなみに、このような内容は本の中には書かれていません。読んでいた私自身が感じたことです。
「選択と集中」か「分散」か
長い人生を考えると、人は必ずリスクを分散させています。
短期間であれば、ひとつのことに短期集中することはあるでしょう。
しかし、その集中は長期間は続きません。より有望な可能性を求めて、自分のフィールドを広げることもありますし、全く別の分野に乗り換えることもあります。
人間は飽きっぽい生き物です。同じことをずっとやり続けるなんてことはできません。