一見すると、毎日満員電車に揺られ、組織のしがらみや多くの業務(ノイズ)に囲まれている「サラリーマン」と、無駄なものを一切削ぎ落として身軽に生きる「ミニマリスト」は、対極の存在に見えるかもしれません。
しかし、経済的な構造と「リスク管理」というメタな視点から解剖すると、この2つは本質的に極めて似た構造(思考回路)を持っています。
どちらも「厄介なものを自分で所有せず、外部のシステムに丸投げすることで、身軽さと安全を確保する生存戦略」だからです。
その本質的な類似性を3つの視点で解説します。
目次
生産手段とリスクの「非所有」
ミニマリストの根本思想は「モノを所有するコスト(管理の手間、維持費、捨てる労力)を手放す」ことです。車を買わずにカーシェアを利用し、本を買わずにKindleや図書館を利用します。
サラリーマンの構造もこれと全く同じです。 個人事業主(起業家)は、事業を回すための設備(PC、ソフトウェア、在庫、オフィス)を自分で買い、売上が立たないリスクも、顧客からのクレームによる法的リスクもすべて「自己所有」します。 一方サラリーマンは、「仕事をするための道具も、事業が失敗するリスクも、税金の計算も、すべて会社というシステムに所有(負担)させる」という生き方です。自分は「労働力」という身一つ(手ぶら)で出社し、面倒なリスクは一切所有しません。
選択と決断の「自動化(アウトソーシング)」
スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグのような極端なミニマリストは、「毎日何を着るか決めるエネルギー(ウィルパワー)の無駄」を省くために、毎日同じ服を着ました。
サラリーマンもまた、人生における巨大な「決断」を会社に自動化させています。 「今日は何の仕事をして利益を生み出すか」「どこの市場を開拓するか」「明日の生活費をどう稼ぐか」といった、起業家が毎日直面する胃の痛くなるような決断とプレッシャーを、すべて経営者や上司にアウトソーシング(外注)しているのです。「言われたことを、言われた通りにこなす」というのは、究極の選択のミニマリズムです。
インフラの「定額制(サブスクリプション)」
ミニマリストは、変動費を嫌い、定額で使い放題のサブスクリプション(NetflixやSpotifyなど)を好みます。
サラリーマンが会社と結んでいる契約も、実は「社会保障と固定給のサブスクリプション」です。 業績が良かろうが悪かろうが、雨が降ろうが自分の体調が悪かろうが、毎月決まった日に一定額のお金が振り込まれ、社会保険料の半分を会社が負担してくれます。この「定額の安心感」というインフラに依存することで、生活のボラティリティ(変動)を最小化しています。